ちえとくをフォローする

トリビア

出産にまつわる5つの誤解

1960年代にアメリカ人のブロンスキー夫妻が「ブロンスキー遠心出産補助装置」の特許を申請しました。これは陣痛中の女性を縛り付けた分娩台を高速回転させて遠心力で赤ちゃんを押し出そうというぶっ飛んだ発想の装置。出てきた赤ちゃんは妊婦の足の間に装着されたネットでキャッチするというから驚きです。幸いというか当然というか、どうみても危険すぎるこの装置は実用化はされなかったということです。

でも私たちはこのトンデモ装置を笑ってばかりはいられません。現代でも妊娠や出産に関しては一見正しいように思える誤解やフェイク情報が飛び交っています。

この記事では、現代社会に流布している出産にまつわる5つの誤解をご紹介します。

誤解1. 「帝王切開が増えているのは肥満で産道が狭くなっている人が増えているから」

世界的にみると日本は妊婦の体重管理が厳しい国。お医者さんから「太ると産道に脂肪がついて難産になったり、帝王切開になる」と定期検診で体重管理の指導を受けた人も多いのではないでしょうか。実際には、女性が太ったからといって産道に脂肪が溜まることはほとんどありません。帝王切開のリスクが高くなるのは、妊娠糖尿病、赤ちゃんの頭のサイズが大きい、双子の妊娠など、母体の年齢や体重に関連する様々な要因によるもの。

日本では「赤ちゃんは小さく産んで大きく育てる」という考えがまだ根強く残っていますが、世界的にはこの考えは様々な観点から見直されています。

帝王切開が増えているのは、多くの産科医が自然分娩よりも帝王切開の方がリスクの算定がしやすいと考えており、特に高齢出産の場合に帝王切開が指示されることが多いという理由もあります。

 
 
 
 
 
Sieh dir diesen Beitrag auf Instagram an
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Ein Beitrag geteilt von Janelle Gullan – Body Wisdom (@thewildorangetree) am

誤解2:「破水したらすぐに分娩すべき」

破水は子宮内で羊水と赤ちゃんを包んでいる羊膜が破れて羊水が流出している状態。羊膜は赤ちゃんを細菌や感染症などから守る役割を果たしています。ですから、破水すると感染症や臍帯脱出のリスクが高まります。そのため破水が起きても陣痛が始まらない時は、人工的に陣痛を促進することが多いのです。

ですが、破水が妊娠37週目より前に起きた場合は、すぐに分娩を誘発すべきではありません。羊膜の裂け目は自然に塞がることがあります。たとえ塞がらなくても、赤ちゃんが未熟すぎるなら、お腹に温存し、出産を遅らせて赤ちゃんの成熟を待った方がリスクが少ないと考えられるからです。ただし、早期破水してしまった場合は、赤ちゃんが合併症を起こさないように厳重に管理する必要があります。

 

 
 
 
 
 
Sieh dir diesen Beitrag auf Instagram an
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

Ein Beitrag geteilt von Kimberly Irish (@weeirishphotography) am

誤解3:「一度帝王切開を経験した人は、もう自然分娩はできない」

帝王切開での出産を経験したら、必ず次も帝王切開で出産しなければならない、と多くの人が信じています。しかし実は必ずしもそうではありません。前回の出産から2年経っていない場合は子宮破裂のリスクが高まりますが、間隔があいていれば普通分娩ができる産院もあるのです。もちろん、赤ちゃんの状態や妊婦の合併症など、他のリスクを考慮してやむを得ないことがあるかもしれませんが、前回の出産が帝王切開だからといって、普通分娩をあきらめなければいけない理由にはなりません。

451.JPG

誤解4:「初産だと出産が遅れる」

第一子の出産は遅くなるという偏見も根強く残っていますが、お産の遅れは出産回数とは無関係。初産であっても、計算上の出産予定日よりもかなり前に生まれることもありますから、妊婦さんはそうした言葉を当てにすべきではありません。ちなみに、予定日ぴったりに生まれてくる赤ちゃんは全体の4%程度です。

ただ、すでに普通分娩を経験している経産婦は産道がすでに一度作られているため、赤ちゃんの頭が骨盤の中ですばやく定位置を見つけることができ、出産のプロセス自体が短くなることは多いようです。ただ、もちろん、ここにも例外はあります。

Big Sister

誤解5:「助産院や自宅での出産は危険」

病院で出産しない妊婦さんはごく一部です。たとえ助産師の助けを借りていても、助産院や自宅で出産する選択肢は多くの人にとって安全性が低いように思えるからです。しかし、これも絶対的な真実ではありません。助産師が付き添い、低リスクの妊婦が自宅で出産することは危険ではないと研究で示されています。ただ、緊急時に病院の医療設備がないことでわずかなリスクは生じます。

病院以外で出産を希望するなら、助産師に付き添ってもらい、緊急時に病院と連携が取れるように手配しておくことが重要です。

Lilith's Birth

現代では、選択肢が増えたことで、一人一人が満足できる安全性の高いお産が可能になっています。ですから妊娠や出産に対する不安を高めたり、女性の選択肢を狭めるような時代遅れな考え方は改めていくべきだと多くの医師が考えています。どんな形であれ、幸せなお産を経験できる母親が増えていけばいいですね。

妊娠・出産に関する記事をもっと読みたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

プレビュー画像: ©reddit/rehditah ©instagram/weeirishphotograp

出産にまつわる5つの誤解